認定特定非営利活動法人 静岡県就労支援事業者機構

協力雇用主の声

少年事件の現状分析と協力雇用主の声

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令和7年度就労支援研修会開催

開催場所:静岡音楽館AOI

 令和7年度の就労支援研修会が1月22日に開催されました。今回は近年、少年事件の支援対象者が増加傾向にあることから、少年事件に焦点を当てた内容となりました。
 講演では静岡県警人身安全少年課の鈴木俊範課長が、少年事件の現状と動向を詳細な事例をもとにお話になり、後半は焼津地区と静岡地区の協力雇用主代表が実例発表を行い、会場からも意見が寄せられました。(報告/鈴木真弓)

講演:「少年事件の現状と動向」
鈴木 俊範氏
(静岡県警察本部生活安全部人身安全少年課長)

 鈴木氏は、静岡市清水区生まれ。昭和63年(1988)に警察官を拝命し、主に詐欺や横領、選挙違反や贈収賄事件、組織犯罪対策等を担当。当機構の平成27年(2015)度研修会でも「暴力団と悪質クレーマー対策」をテーマにご講演いただいています。
 現在、氏が所属する静岡県警の生活安全部人身安全課は、ストーカーやDV、児童虐待、行方不明等、11の係に分かれて各案件を扱っています。少年事件を扱うのは文字通りの「少年事件指導係」で、このほかに県内3署に拠点を置き、各署に対する捜査支援を24時間体制でも行っています。
 また県内7署には少年サポートセンターを設置しており、少年に関する相談、補導、継続した指導や支援を担当。教員免許や公認心理士等の資格を持つ少年警察補導員が在籍し、学校や児童相談所と連携して活動しています。

少年事件の傾向と複雑化する要因

 静岡県内で令和7年11月末までに刑罰法令全般に触れる行為で検挙された犯罪少年(14~20歳未満)、補導された触法少年(14歳未満)の総数は797人。過去10年間をみると数の上では最少ですが、前年に比べるとプラス51人と、検挙数は増加傾向にあります。とくに窃盗、暴行、傷害が増えており、SNSに起因するトラブルや犯罪、性的被害を受ける少年、大麻などの薬物事犯、闇バイトへの関与等、社会状況の変化に伴う新たな形態が顕在化しているようです。
 非行や被害の構造も大きく変化しています。「不良グループ型」から「孤立・SNS依存型」へと移行し、低年齢化・多様化も進み、「家出をして未成年者略取の被害に遭う」「児童虐待の背景に家庭不和や学校でのいじめがある」「SNS上のトラブルが現実世界の事件に発展する」といったケースが増えています。
 このような少年事件が起きる要因は複合的だと考えられます。共働き世帯の増加等で子どもが孤立し、子どもにとって本来安心できる居場所であるべき家庭がそうではなくなっている。学校でもいじめや不登校をきっかけに孤立する。彼らが依存するのはスマホです。
 デジタルネイティブ世代の子どもはスマホ操作に詳しい一方、情報モラルや判断力の未熟さから誹謗中傷、性的被害、闇バイト等に巻き込まれるケースが後を絶ちません。中には発達障害によって感情のコントロールがうまく出来ず、衝動的に行動してしまうケースも。
 非行や問題行動は社会や大人への反発というよりも、「誰かに気付いてほしい」という叫びである場合が少なくないのです。私たち大人は、「小さな変化に気付き、早めに、比定せず、温かく声を掛ける」―これが何より肝要です。難しいことではありませんし、家庭だけ、学校だけ、職場だけで抱え込むものでもない。家庭・学校・地域・警察・行政・雇用主が連携し、切れ目のない支援を行うことで、少年を守り、ひいては未来の社会を守ることにつながります。鈴木氏は会場の雇用主に対し、「失敗しても立ち直れる環境」「話を聞いてくれる大人の存在」「小さな成功を認めてもらえる経験」が、彼らのその後の人生を大きく変える、と力を込めます。

特殊詐欺で検挙された少年事例

 令和6年中の統計によると、刑法犯全体の少年の再非行率が約2割であったのに対し、特殊詐欺に加担し検挙された少年再非行率は約6割と非常に高くなっています。静岡県内で特殊詐欺に加担し検挙された少年は、令和7年中で10人(暫定値)。前年比では13人減少しましたが、20歳以上を含めれば57人が検挙されており、うち少年は約2割でした。
 一昨年の8月には東京都内の中学3年生の少年が、甥になりすまして静岡県東部に住む高齢の女性から現金100万円をだまし取る受け子として、都内17歳解体工の少年が現金回収役として、ともに県内で逮捕されました。中学3年生は封筒入りの100万円をだまし取ると、タクシーでコンビニに行き、近くの公園の公衆便所で17歳の少年と接触して封筒を渡し、報酬10万円を受け取った。彼は「詐欺だとわかっていたが、簡単に金が入るのでやった」と供述しています。
 また報道でも知られたとおり、昨年末に裾野署管内で1,000万円が強取された緊縛強盗に関し、17歳の高校生3人と19歳の少年が逮捕されました。知らない者同士が集められたいわゆる闇バイトと思われますが、もう少し背景を調べる必要があります。

少年による薬物事犯

 令和7年11月末までに静岡県内で発生した大麻事犯の少年検挙数は28人(暫定値)で、過去10年間で最も高くなるものと思われます。
 学識別では有職少年が13人で最も多く、次いで無職少年9人、高校生6人。年齢別では19歳が13人と最も多く、次いで17歳が7人。残りは18歳6人、16歳2人でした。
 過去の具体例をみると、令和5年9月、15歳の派遣社員が大麻所持で逮捕され、令和6年6月には15歳の高校生が覚醒剤使用で逮捕されました。令和7年6月には17歳の高校生、7月には16歳の高校生と17歳少年が、いずれも大麻所持で逮捕。彼らは「友人に誘われて」「これまでも大麻やMDMAを使ったことがある」「酒やタバコでは味わえない高揚感があって気分がよくなる」等と供述しています。

少年の行方不明事案

 少年の行方不明事案は、誘拐や福祉犯被害に遭うおそれが高いほか、保護者の監護を離れ、不良交友関係が広がることによって非行性が高まることが懸念されます。警察としても最大動員して県内外で捜査を行い、昨年の夏休み期間には、遠いところで鳥取県まで捜査員を派遣しました。
 令和7年中に警察が受理した行方不明届は1,740件。うち小中高生は262件となっています。
 発見された少年のうち、県外で発見されたのは44件。発見場所で多かったのは東京都内10件、神奈川県内9件、愛知県内7件の順になっています。
 行方不明の原因・動機としては、「自分の居場所がない」等、家庭関係が102件と最も多く、次いで成績不振等の学業関係38件、友人の誘いや好奇心が34件。東京都が多い理由は、新宿歌舞伎町の東宝ビル横「トー横」等、少年や若者が集まるコミュニティの存在が大きいようです。最近では人気漫画の舞台である横浜で聖地巡りをして自殺しようとした少年もいました。

少年蝟集とオーバードーズ問題

 トー横キッズは報道でも知られていますが、類似場所として名古屋のドンキホーテ横の「ドン横」、大阪の道頓堀グリコの看板下の「グリ下」、横浜のビブレ付近の「ビブ横界隈」があり、静岡県内の少年が家出をして新宿や名古屋に行く事例も見受けられます。
 県内ではトー横キッズのような蝟集(いしゅう=群がり)は確認されていませんが、昨年浜名湖で発生した男子高校生殺人事件の被疑者グループは、いわゆる浜松駅周辺の繁華街に集まる「街メン」、浜松駅近くのH&Mの南側に集まる「H裏」に集まっていた少年らによる犯行でした。この事件以来、補導・検挙活動に注力し、今は表立った蝟集は見られなくなりましたが、特定の公園や施設に集まる現象は見られます。こうした場所では仲間同士で交流する一方、SNSの情報を通じて入手した薬物やアルコールに手を出すリスクが高く、オーバードーズや健康被害に直結するケースも報告されています。
 令和7年中、静岡県内で自殺した少年は19人。年齢別では16~18歳が17人、14歳が2人でした。学識別では学生・生徒等が13人、無職6人。自殺した少年19人のうち、オーバードーズは2人でした。
 オーバードーズによる自殺未遂は40人で、前年に比べ9人増加しています。男女別では31人が女性で約7割でした。

子どもたちを犯罪被害者にさせないために

 令和7年中に、SNSに起因して犯罪被害に遭った18歳未満の被害児童は38人。前年に比べ3人増えました。罪種別では略取誘拐が14人と最も多く、次いで児童ポルノ9人、不同意性交5人という順。学識別では高校生14人、中学生15人、小学生9人でした。
 犯罪被害に遭わないよう、警察では静岡大学と協働で自画撮り被害防止のための教材を作成し、学校等で活用してもらっています。またフィルタリングサービスの利用促進、サイバーパトロールで発見した不適切な書き込み投稿者や閲覧者への注意喚起、警告等を行っています。
 最後に児童虐待について、静岡県内では令和7年中に児童相談所への通告が1,475人、警察が認知した件数は暫定993件で、このうち死亡した児童は2人いました。ちなみに令和6年は認知件数1,123件で死亡1人という状況で、児童相談所への通告は1,716件ありました。
 令和7年の通告事案を態様種別に見ると、児童の目の前で夫婦げんかをして配偶者に暴力を振るう等のいわゆる面前DVを含めた「心理的虐待」が最も多く1,245人。次いで「身体的虐待」が173人、ネグレクトが50人、性的虐待が7人でした。
 現在、静岡県内5ヵ所にある児童相談所及び、静岡市と浜松市の各児童相談所に計8人の警察官が出向、派遣または併任として勤務し、虐待事案に対応しています。
 静岡県警人身安全少年課では公式SNSを運用し、オリジナルキャラクターによる中高生・保護者向けの情報を随時発進しています。今回のお話を機会に、当機構会員の皆さまとそのご家族、社員の方々にもフォローや情報共有をお願いしたいと思います。
(講演内容と資料をベースに、再構成しました)

協力雇用主事例発表・意見交換

 焼津地区協力雇用主会からは、従業員25名の建設会社を営む新村香根美氏が登壇。平成15年(2003)、他界した父から会社を受け継いだ直後、保護司の飛び込み依頼で出所者を引き受けたものの、2カ月後に空き巣で逮捕。周囲から「(窃盗癖は)病気だ」と言われ、「病気なら治療が必要だろう」と考え、更生保護に腰を据えて向き合うようになったそうです。
 令和6年に多摩少年院入所中の少年とオンライン面接を行った際、立ち直りの意欲が感じられず、「手紙を書いて」と依頼。しばらくしてから、心情を綴った丁寧な手紙が届き、引き受けることに。20歳になった今は職場でも笑顔を見せるようになったそうです。きちんとした生活規範が身についており、少年院での教育の賜物だろうと新村氏は振り返ります。
 静岡地区協力雇用主会の作山清人氏はドライバー40人を抱える運送会社の管理職。これまでに引き受けた対象者には、8年、3年、2年と継続勤務者もいます。3年と2年の対象者はもともと薬物事犯の再犯者でしたが、無事に更生し、会社の戦力となっています。
 作山氏は、ハローワークには刑務所出所者専用の「非公開求人票」があり、県内で300件ほどの求人情報があるが、静岡市内は30件に留まっており、ぜひ積極的に利用してほしいと呼びかけました。また、対象者はせっかく就職が決まっても出所した直後は住居や生活費がなく、更生保護施設に一時的に入るしかなく、運送業で働くための資格取得は難しいと指摘。作山氏は「生活保護は受けさせない」とのポリシーで、会社の側にアパートを用意し、きちんと働いて貯金するよう指導する等、マンツーマンで寄り添っています。
 2人の実例発表に多くの参加者が熱心に耳を傾け、ハローワーク担当者や小学館集英社プロダクション(静岡刑務所の運営委託会社)の担当者からも意見が寄せられました。

鈴木真弓

インタビュー・文・写真/鈴木真弓

フリーライター
静岡市出身・在住
静岡県の地域産業、歴史文化等の取材執筆歴35年
得意分野は地酒、農業、禅文化、福祉ほか

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